増田洋一郎個展「X ING」

X ING(クロッシング):交差すること、横断すること、そして都市の中で視線や身体、情報が交わり続ける状態を示す。
都市は、無意識の信仰によって成立している。
中世においてマリア信仰がゴシック建築を生んだように、現代都市においてもまた、人々が信じる「何か」が空間の構造を組み上げているのではないか。
その信仰は宗教ではなく、表面に宿っている。
本シリーズの起点である秋葉原は、個人の欲望や嗜好が過剰に露出し、内面がそのまま外部に現れる都市である。
一方で銀座は、欲望が高度に編集され、洗練された形式として提示される場所だ。
人々はショーウィンドーに自らを映し、装いを通して所属や立場を示す。
かつて紋章や意匠が共同体を示したように、現代においてはブランドがそれに代わる記号となっている。
私はこの二つの都市のあいだに立っている。
公的にはブランドに関わり「外側」を構築する立場にありながら、私的にはコンテンツやイメージに支えられている。
銀座を取材した作品において、私はブランド・ロゴという現代の記号を反復し、都市空間の中に再配置する。
ブランドとは、人々が無意識に信じている「表面」である。
交差点は都市の中心として語られるが、その核には何も存在しない。
人々は互いに触れることなく、横断歩道の上で軌跡を交差させ、すれ違っていく。
白と黒のゼブララインは人の流れを導くと同時に分断し、都市に特有のリズムを生み出す。
それは反復される行為であり、無意識の儀式のようでもある。
その中で不意に現れる、ひとりの女性の顔。
それは実在の人物でありながら、同時に像として立ち上がる。
都市において女性の像は、消費の対象であると同時に、理想や欲望が投影される媒体でもある。
私はその像に、現代におけるマリアの残像を見る。
ブランド、女性、交差点。
それらは異なるレイヤーに属しながら、同時に都市における信仰の構造を形成している。
その重なりの中に、ひとつの空間が立ち上がる。
それは実体を持たないが、確かに存在している。
▼Artist

増田洋一郎 (https://www.instagram.com/yoichiro_masuda/)
1981年生まれ
2005年 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 卒業
東京を拠点に活動
増田洋一郎は、都市の交差点や横断歩道を主題に制作する画家。人、視線、情報、欲望が交錯する都市空間をモチーフに、秩序と混沌、美しさと不穏さがせめぎ合う現代の風景を描いている。断片化されたモチーフや反復する線を通じて、都市の表面に現れる心理や構造を絵画として再構成している。
▼展示会情報
【Date】2026/5/16(Sat) – 5/31(Sun)
【Open】12:00 – 19:00
【Close】Monday
【Location】TERRADA ART COMPLEX II 3F, 1-32-8 Higashi-Shinagawa, Shinagawa-ku, Tokyo 140-0002

