EXHIBITIONS & FAIRS

「名前はまだない。」

「名前はまだない。」

これは誰もが目にしたことがあるだろう。
文豪・夏目漱石の「吾輩は猫である」の冒頭部分から拝借したタイトルだ。

この作品の主人公は名前がない猫。しかし、それは人間にとって誰でもないことを示している。猫にはこれから名前がつくかもしれないし、このままずっとつかないのかもしれない。けれども、自分で名前をつけることはしない。なぜなら、その必要がないと分かっているからだ。

本展示は「You&I」(あなたと私)と「Wall」(壁)の2シリーズで構成されている。

僕はもともと、キャラクターを「特定の何者でもない存在 / 誰でもない存在」として描いている。それを通して、僕たちも同じではないかという問いかけをしている。
もし、この世界に人間しかいなかったら、僕たちは自分が人間であることに気付かなかっただろう。それは比較対象がいないからだ。

何者でもない僕たちが何者かになるとしたら、他者がいて、その存在を認めること、または認められることから始まると思う。それが「You&I」のスタート地点である。
「You&I」は自分と他者との認め合いを表すように、2人以上のキャラクターで構成され、そのタイトルには「あなたがいるから私がいる」という意味が込められている。

「Wall」シリーズは、作品の物質性を積極的に示すことが目的の一つである。
質量と時間が存在しないデジタルに、物質性と時間性という「重み」を持たせたいと考えた。美術品の永続性に対する考え方とは異なり、経年劣化によって朽ちていく壁のように、作品には歳を重ねて変化するリアリティがあってもいいのではないだろうか。

最後に、鑑賞者と作品との関係は当人の内だけにしかないものであり、僕が入る余地はない。この展示や作品自体に名前をつけるのは、この展示を訪れていただく一人一人であって良い。それを他言する必要もないと思っている。

もし、あなたがこの展示に名前をつけるのであれば、どんな名前になるだろう。

名前がまだないこの展示は、あなたがいてくれることによって、名前を持つことができることだろう。

▼会期情報

【DATE】2023/12/5(Tue) – 12/23(Sat)
【OPEN】12:00-19:00
【CLOSE】Sun・Mon

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田村勇太 (Yuta Tamura)
1987年生まれ。神戸市外国語大学卒業。

個展/二人展
2023年 「Hello, Real World.」Yuta Tamura & Riri Okemoto / Gallery NOWHY (ソウル)
2022年 「8-Bit Journey」 Neptune Gallery (台北)
2022年 「心象と風景の関係について」 きらくえん (兵庫)
2021年 「ヘヤニボタニカ」 ギャラリールナ (兵庫)
2021年 「八卦ヨイ」 日本橋Art (東京)

グループ展/アートフェア
2023年 Mango Art Festival (バンコク)
2023年 ThinkSpace Project (ポートランド、ハワイ、アムステルダム)
2023年 「e to oto to」 プラスアート (東京)
2023年 「蝉鳴」 (台北)
2022年 「STYLE WARS -EpisodeⅣ-」 KATSUMI YAMATO GALLERY (東京)
2022年 3331 ART FAIR (東京)
2022年 「Intermission」 銀座蔦屋書店 (東京)
2022年 Art Fair Asia Fukuoka (福岡)
2022年 「蝉鳴」 (台北)
2021年 日墺交流展 art-P (ウィーン)

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