EXHIBITIONS & FAIRS

HALF-WAY

 タカハシマホの作品に登場するキャラクターは、現代を象徴する少女像である。

 1980年代以降の生まれは、インターネットのある生活環境で育ち、アニメ、漫画、ゲームが身近なデジタルネイティブ世代に属し、これらのコンテンツに多くの影響を受けている。
タカハシマホが慣れ親しんできたコンテンツの中での登場人物たちは、わかりやすくヒーロー、ヒロイン像として描かれ、我々の憧れの対象であり、同時に強く美しく描かれていた。

 しかし彼女の描く少女像は、いわゆるオタク的日本文化の中での見慣れた姿をしていない。
装飾の施されていない、シンプルな見た目をしている。これは、彼女がデザインを学んだことも理由に挙げられるが、幼少期への執着ゆえのものでもあるといえる。

 タカハシマホの作品の原点は、その幼少期を形成した過去の経験や体験である。作品に登場する少女像「あの子」は、重要なパーソナリティーが形成される幼少期を可視化したものとして使用されている。パーソナリティーとは、遺伝と環境の相互作用の中で、事故や病気等による外的要因を除いて、変化し、発達しながら形成されると考えられている。子どもたちは無垢であるがゆえに脆く、複雑な存在なのである。それはまるで変態前の蛹のようだと彼女は言う。

 そう言った全ての記憶と経験が、人として成育するうえで重要な軸となり、支えとなる。それらは大人になった現在、社会の不条理の中で、「あの子」という存在は、生きていくうえで自分自身を守るための聖域であり、ヒロイン像とも異なる見た目は多様性の象徴にもなり得るのだ。

 作品は、主に日本の伝統である「箔」を使用したものが多いが、それは輝かしくもいつまでも色褪せない過去の偶像である。紀元前3,000年頃より使われ始めた金は、多岐にわたって人々の心を魅了してきた、普遍的な価値のメタファーなのだ。幼少期の記憶や経験は、永続的で重要なものであり、現在へと繋がっている。その記憶や経験を、金に置き換え表現している。懐古からくる郷愁さを感じつつも、現代的な表現を再現するためのツールとして使用している。

 近年、多様性についての課題が挙げられている。我々も現代を生きる当事者の一人である。
歴史と共にDNAに刻まれてきたものを数年で変化させることは難しいが、一歩ずつでも進むことは出来ると考え、認め合うことのできる世界はそう遠くない未来にあると願っている。
小さな自分を認めるたびに、平和は近づくと信じている。
彼女の制作する現代的少女像は、豊かな時代が生んだ平和と平等を願う象徴なのである。


▼会期情報

【Date】2024/07/13(Sat) – 07/27(Sat)
【Open】12:00 – 19:00
【Close】Sunday and Monday
【Location】Mitsuboshi BLDG 4F, Asakusabashi 4-1-2, Taito-Ku, Tokyo 111-0053, Japan

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タカハシマホ

1992年生まれ。千葉県出身。
デザイン専門学校卒。
フリーランスのイラストレーター 、デザイナーを経て、美術系専門学校にて講師を務めた後アーティストへ転身。

個展
2024 「Parade」(京都 蔦屋書店、京都)
    「THINK THINK THINK」(A/Dギャラリー、東京)
2023 「MUYU MUFU (No sorrow, no wind」(銀座 蔦屋書店、東京)
    「聖域」(阪急うめだ、大阪)
    「SAN SEN SOU MOKU」(A/Dギャラリー、東京)
    「UTSUKUSHI」(SOKA ART、台湾 台北)
    「MEDETASHI」(SOKA ART、台湾 台南)
2022 「TORI no ICHI タカハシマホ展」(Goyo GALLERY、東京)
    「緒」(奈良 蔦屋書店、奈良)
    「to」(GALLERY VOYAGE、東京)
2021 「かみさまのけはい」(LIGHT HOUSE GALLERY、東京)

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