Jini Solo Exhibition

Jini solo exhibition
Smudge it, touch it,
as if drifting in between.
にじませて、触れて、
そのあいだを漂うように。
私は、目の前に立ち上がるイメージのさらに奥に潜む「描く身振り」そのものを、自らのメディアとして捉えています。制作の中心にあるのは、つねに「肉体」です。この肉体は、エロスや官能、肌理といった広い領域を内包しながら、ジェンダーやセクシュアリティを固定化する枠組みから自由であろうとする存在でもあります。私は、その肉体を既存の規範とは異なるレンズで捉え、描くための描法を探究してきました。この異なるレンズは、世界を別の視点から知覚する契機をもたらし、それが制作の根幹にある私の関心とつながっています。
フレンチ・フェミニストの思想実践である「エクリチュール・フェミニン」は、既存の言語体系から離れ、新たな書法を模索した点で、私に深い示唆を与えてきました。描くプロセスや動きが痕跡として残るドローイングは、肉体が内容であると同時にメディアでもあるという相関を含んでいます。この行為は、ある種のパフォーマンスにも等しいものだと考えています。
近作では、オルタナティブ・ポルノグラフィ(1)やポールダンサーといった、規範を撹乱し身体表現の新たな可能性を開く存在をモチーフに、接触の熱、感触、テクスチャー、そして感情の揺らぎを抽出しています。エレーヌ・シクスー(2)が「ドローイングは輪郭線のないものを描く」(3)と述べるように、私の描線は輪郭を確定するのではなく、触覚的なムーブメントそのものを追う行為です。物体には本来、明確な輪郭線は存在しません。その事実に立ち返ることは、感覚の次元へアクセスする回路をひらく行為でもあります。
(1)主流の性的表現やジェンダー規範に抗い、身体や快楽を表現するポルノグラフィ。
(2)Hélène Cixous(1937– )アルジェリア出身の作家。エクリチュール・フェミニン(écriture féminine)という言葉を最初に提唱した。
(3)Hélène Cixous, “Sans Arrêt, non, État de Dessination, non, plutôt: Le Décollage du Bourreau” (1991).※「書くこと」と「描くこと」について書かれたエッセイ。
—— Jini
ジーニの作品においては、「エクリチュール・フェミニン」と「視覚に依存しない知覚のあり方」が実践的に結びつけられる。「肉体」は、主題であると同時に媒介としても機能し、伝統的な絵画言語が依拠してきた視覚中心のパラダイムに対抗する表現が立ち現れる。
ジーニの作品を通じて、私たちは、従来のジェンダーやセクシュアリティを枠づけ、規範化する視線の構造のもとで「肉体」がいかに凝視され、描かれてきたのかをあらためて意識することができる。同時に、そうした構造から解放されることによって生まれる、新たな芸術言語の可能性にも触れることができる。近年、理論研究と制作の往還を通じて、ジーニは主流の視覚体系や二項対立的な言語構造に抗う表現を、より明確に提示している。
当ギャラリーは、アートを通じて社会的な問題意識や時代背景を共有し、国や文化を越えた想像力を重視している。ジーニの創作実践は、身体・ジェンダー・セクシュアリティといった普遍的で越境的なテーマに継続的に向き合い、既存の規範に依存しない触覚的で親密な感覚の言語を発展させており、当ギャラリーの文脈と深く響き合う。本展では、ジーニが「パフォーマンスと絵画」、「主題と媒体」、「アート表現とセクシュアリティ」のあいだに築き上げてきた結びつきと、その精神的な核を紹介したい。
—— Goyo Gallery
< レセプション >
11/29(土)16:00〜19:00にレセプションパーティを開催いたします。
どなたでもご参加いただけます。
当日はホットワインおよび各種お飲み物をご用意しております。
また17:00より、作品をご鑑賞いただきながら作家へのインタビューを約20〜30分ほど実施いたします。
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< パフォーマンス >
「So does the bird and so does the fish」
アーティスト:Jini、草薙樹樹、Lars Koens
日程:2025年12月13日(土)
時間:14:00 – 14:30頃
▼Artist
Jini (https://www.instagram.com/jini_t11/)
▼Exhibition Information
【Date】2025/11/29(Sat) – 12/21(Sun)
【Open】12:00 – 19:00
【Close】Monday
【Location】TERRADA ART COMPLEX II 3F, 1-32-8 Higashi-Shinagawa, Shinagawa-ku, Tokyo 140-0002

