EXHIBITIONS & FAIRS

SILENCE



花田和治個展

「 SILENCE 」

花田和治の絵画には、多くを語らぬ静謐が漂っています。

それは、昼と夜の境界に浮かぶ太陽のようでもあり、温かな海に浮かぶ氷片のようでもあり、雪に覆われようとする足跡のようでもあります。その沈黙のうちに、すでにすべての言葉が語られており、イメージと余白、冷たさと温かさが画面の中で共鳴し合うことで、簡素な構成の中に広大な風景を抱えています。そこには、北の風景と心象風景が交差し、「存在と無」の対立を超えた、揺らぐことなき均衡が宿されています。

Goyo Galleryは、花田和治を北海道抽象芸術、さらには戦後日本の抽象絵画史における重要な存在として位置づけます。彼は、北海道の自然風土と精神性を背景に、独自の詩情と空間美学に満ちた絵画世界を築き上げました。とりわけ、その余白の美と静謐な意境は、日本的感性を深く体現すると同時に、国際的な抽象芸術の流れに対しても独自の響きをもたらしています。近年、東洋的思索や自然観を取り込んだ抽象表現はグローバルに再評価の動きを見せており、花田の作品もまた、その潮流の中で新たな視座から発見されるべきものだと私たちは考えます。

本展でご紹介するのは、彼が芸術家として円熟期を迎えた後期の重要な作品群です。長年の探求の末に結晶した世界観は、東洋思想とも響き合い、形と無、動と静、内と外といった対立を超えて、より円融で均衡のとれた境地を示しています。これらの作品は、日本の戦後抽象芸術の文脈を超えて、今日の国際的なアートシーンにおいても新たな思考や感性を刺激し、静けさの奥に広がる普遍的な問いを投げかけるものとなるでしょう。


▼出展作家

花田和治(1946 – 2017)

1946年
北海道札幌市にて、父・花田五郎、母・ヨシの七人兄弟の末っ子(二男)として生まれる。

1964年
北海道札幌東高等学校卒業。

1965年
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学。
小磯良平に師事。

1969年
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻に進学。

1970年
初個展(東京・ギャラリー常磐)にて《Work D》ほかを発表。
東京藝術大学より大橋賞受賞。

1971年
東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修士課程修了。
3か月間ヨーロッパを訪れる。北欧からイタリア・ナポリまで南下。

1974年
札幌に戻る。

1975年
山田恵と結婚。
北海道女子短期大学の非常勤講師を務める(~1983年3月)。
個展(札幌・時計台ギャラリー)開催、《エプロン》を含む油彩25点、版画7点を出品。
「大橋賞受賞記念展」(東京セントラル美術館)に《Clip 1》を出品。

1976年
北海道造形美術学院に勤務。1987年に主任講師、1996年退職。

1977年
長女・ちはる誕生。
個展(札幌・時計台ギャラリー)開催、《手斧》《かんな》を含む油彩6点、版画4点、彫刻2点を出品。

1978年
米国に1か月滞在、美術研究を広げる。
「’78 北海道現代美術展」(札幌・時計台ギャラリー)に《Drawing Board》を出品。
湧別町役場(現・湧別町総合支所)町長室に壁面レリーフ《防潮堤》を設置。

1979年
藤女子短期大学の非常勤講師を務める(~1992年)。

1981年
次女・明子誕生。
「第4回北海道現代美術展」(北海道立近代美術館)に《都市Ⅱ》《夕霧》を出品。

1982年
「第9回エコール・ド・北海道抽象派作家協会展」(札幌・時計台ギャラリー)に《森へ》を出品。会員となる。

1983年
「北海道美術 1960-1980展」(カナダ・アルバータ州立美術館)に《エプロンⅡ》を出品。

1985年
個展(札幌・時計台ギャラリー)開催、《二つのイヤリング》を含む10点を出品。

1989年
アトリエを拡張。
「札幌・アメリカ現代美術交流展」(札幌アメリカ文化センター)に《丘と海》を出品。

1990年
個展(札幌・ギャラリーTAPIO)開催、《波-1》《波-2》《波-3》《波-4》《スキーⅡ》など9点を出品。

1991年
「第4回札幌時計台文化会館美術賞展」(札幌・時計台ギャラリー)。
札幌大谷短期大学の非常勤講師を務める(~2008年)。

1992年
個展(札幌・ギャラリー藍)開催、《地下鉄にて》《チコ》を含む油彩9点、水彩4点を出品。
株式会社A.I.M.(北海道北広島市)のギャラリービル壁面に《花と星》を設置。

1992年
個展(札幌・時計台ギャラリー)開催、《砂と波(海辺の歌)》《広い原》《春》を含む10点を出品。

1993年
「S’sコレクション展」(札幌・TEMPORARY SPACE)に《エプロン》を出品。

1994年
釧路駅連絡通路「サンサンロード」に陶板壁画《花鳥》を設置。
「第5回十人の空間展」(札幌・大丸藤井セントラルスカイホール)に《大地と春の波》を出品。
「北の潮流-北海道の前衛美術展」(北海道立近代美術館)に《空と斧》《月夜》を出品。

1995年
「第6回十人の空間展」(札幌・大丸藤井セントラルスカイホール)に《鯉のぼり》を出品。

1997年
個展(札幌・サロン・ギャラリー・ド・ラール)開催、《空》《道ばた》《冬道》を含む24点を出品。

1998年
「’98 札幌美術展」(札幌市民ギャラリー)に《雪と水》を出品。

1999年
「’99 札幌美術展」(札幌市民ギャラリー)に《PIRIKA》を出品。
特別養護老人ホーム「グリーンピア」(札幌)玄関ホール壁面に油彩《春の花》《リンゴ》を設置。

2000年
「第35回北海道主体美術協会展」(北海道立近代美術館)に依頼出品《母の列車》。

2005年
個展(札幌・TEMPORARY SPACE)開催、《エイミのファンタジー》《海辺にて》《母の列車》《舞踏》を含む油彩8点、版画9点、素描1点を出品。

2006年
グループ展「北海道の美術―この100点」(北海道立近代美術館)に《空と手斧》を出品。

2007年
展覧会「大谷学園創立100周年記念 大谷の美術100選」(札幌市民ギャラリー)に《桜の季節》《石狩川河口にて》を出品。

2011年
「A★MUSE★LAND★TOMORROW 2012 in 三岸美術館―おばけマールとふしぎな絵」(北海道立三岸好太郎美術館)に《月夜》を出品。

2012年
個展「北の創造者たち #04 ファンタジー 花田和治展」(北海道立近代美術館)開催。油彩49点、版画4点を展示。

2014年
藍綬褒章を受章。

2017年
逝去。

2020年
回顧展「花田和治の世界―色とかたち・ユーモアとポエジー」(軽井沢ニューアートミュージアム、~2021年)開催。
作品集『花田和治の世界』(軽井沢ニューアートミュージアム)刊行。

▼展示会情報

【Date】2025/10/11 Sat. – 11/1 Sat.
【Open】12:00 – 19:00
【Close】Monday
【Location】TERRADA ART COMPLEX II 3F, 1-32-8 Higashi-Shinagawa, Shinagawa-ku, Tokyo 140-0002

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