Jungwoo Hong solo exhibition
「こころのかけら Fragments of Mind」
ホン・ジョンウ(Jungwoo Hong)の絵画は、自身の成長過程における経験と感情の記憶に基づいて構成されている。幼少期に夢中になった壁の落書きのように、彼の作品では絵具の重ね塗りや削り跡が織り重なり、時間の痕跡が残されている。制作にあたって特定の計画やテーマは設けず、その時々の複雑な感情を紐解くように描き進めることで、記憶の断片が象徴やイメージとして自然と浮かび上がる。
ホンの創作姿勢には、詩的とも言える肯定性がある。たとえ現実が悲劇的で不安に満ちていても、彼はその中に光を見出そうとする。彼に深い影響を与えた映画『ライフ・イズ・ビューティフル』では、過酷な現実をユーモアと愛で包み込み、子どもの世界を守ろうとする父親の姿が描かれている。ホンもまた、過去の記憶や感情、希望の断片を再構成し、図像として紡ぎ出す。その素朴でありながら深い意味をもつイメージは、「取り戻された時間」の視覚的な詩である。
こうした図像の変化は、画面上に現れる直線や矢印などの要素にも見て取れる。それらは秩序や方向性を象徴し、感情や記憶の無秩序な広がりが、物語として再構築されていることを示している。ホンの作品は、もはや自己の感情だけでなく、他者や時間、世界との関係をも描き出すものとなっている。過去と未来、子どもと大人の視点が交差することで、作品は時空を超えた旅のような存在となっている。
西洋の心理学における「Mind」と、東洋思想における「こころ」には微妙な違いがあり、それはまさにホン・ジョンウの作品に表れる思考の背景と感覚の在り方にも通じている。本展「こころのかけら｜Fragments of Mind」は、彼の作品に見られる内なる美しさと、その背後に潜む残酷な現実との対比から着想を得ている。現実の厳しさの中で、美しいものは星のように輝きながらも、ガラスのように壊れやすい。そうした儚くも輝くかけらこそが、ホンの作品における唯一無二の心の宇宙を形作っている。
▼出展作家
Jungwoo Hong (https://www.instagram.com/jungwoohong_art/)
▼展示会情報
【Date】2025/5/3(Sat) – 5/24(Sat)
【Open】12:00 – 19:00
【Close】Sunday and Monday
【Location】TERRADA ART COMPLEX II 3F, 1-32-8 Higashi-Shinagawa, Shinagawa-ku, Tokyo 140-0002